1:映像業界がヤバい…

ー映像業界の現状ー

随分と長い間、映像業界にいましたが、正直、今、ホントにヤバい状況だと思います。

のっけからネガティブな事を書いちゃいましたが、これ、残念ながらホントです。はい。

これから、映像業界に就職したい、映像クリエイターになりたいなんて思ってる人には、ちょっとショックな話かもしれませんけれども、

映像業界に身を置いていても、明るい未来が見えないのですよ。

おかしな話ですよね。映像(いわゆるSNSの動画も含みます)の需要は増えているんですよ。

既存のテレビなどのメディアだけではなく、

配信系のメディアNetFlixAmazonPrimeなどの外資系をはじめ、各テレビ局もそれぞれ第2の放送媒体として、配信チャンネル持ってますよね。それだけじゃなく、各CS放送局も配信媒体を持っていますし、映画配給会社も持ってますね)

ホント、メチャクチャ増えました。

YouTubeを始めとした投稿型SNSも一時期の勢いは無いにしても、その分一般化したと言いますか。個人だけではなく、各企業さんも、積極的に自社チャンネルを作って情報を発信しています。ビジネスになっていますよね。

これだけ、需要があれば、仕事が増えても良いはずなのですが…

ー仕事は減った?ー

ところが、思ったほど増えて無いのが現状なのです。それどころか、例のパンデミック以降、減っているのですよ。僕の友人も何人も職替えをしています。(まぁ、実力が無いから仕事が無いんだろと言われたら、それまでですが。)

全体的にギャラも減っていますしね。

例のパンデミックが大きな原因なのは、間違いありません。僕も企画が上がっては流れの繰り返しでした。
しかし、映像の需要は、パンデミック禍でもあったわけです。新規に作るものは減りましたが、さすがに3年間も使い回しを流すわけには行かないです。

新規の物を作っているのに、仕事が減る。それはなぜなのか。

ー一般化って?ー

その答えは、先ほど書いた一般化にあると思います。

一昔前までは、映像業界で働くには、それなりの専門的な技能が必要だったわけです。
技術さんは言うに及ばず、ディレクター、監督、プロデューサー、全ての職種の方々が、それなりの専門的な技能を身に付けて、現場に入っていました。

それに、機材も大きかったですし、高価でした。普通に編集室を作るのに、億単位のお金がかかりました。カメラだって一台、数千万です。

そういった機材を扱うわけですから、専門学校などで技能を学んだとしても、入社してからはアシスタントとして修行の日々でもありました。だって、高価な機材を壊しちゃったら、シャレにならないですよ。替えが効かない機材もありましたし。

それに、機材を扱うのも難しいんですよ。いろいろ調整も必要でしたし。

学校には実際に使われているような機材など入れられるところなんて数少ないですし(学校によって違うと思いますけど、少なくとも自分が卒業した学校には、大きなスイッチャーやらはありませんでしたねぇ。)

だから、アシスタントとして修行をしながら、専門的な技能を学ぶわけですね。

まぁ、修行時代に先輩からのパワハラがあったとか、休めないとか、寝れないとか、ブラックな部分はここでは詳しくは書きませんけど、そう言う面もあったのは残念ながら事実です。(今は無いですよ。そんな事をしたら、大変な事になります。)

一つの映像を作るのに、アシスタントも含めて、たくさんの人が関わるわけです。多くて数百人以上が関わっていましたねぇ。
てことは、人件費だけでも、結構な金額になるんですね。実際、制作費は高かったですよ。

バブル期(年齢がバレちゃいますね)には、1本あたり億のお金が当たり前のように飛び交っていたと記憶しています。ギャラも良かったですよ。経費もたくさん使えました。

まぁ、当時、それなりの技能も持っていましたし、スポンサーさんもそれはわかっていたので、ありがたくいただいていました。

バブル崩壊後も僕自身は、仕事量で言えば、あまり変わりませんでした。

制作費が下がった分、ギャラは下がりましたけどね。

ー技術革新の怖さー

それよりも技術革新の方がヤバいです。機材は安く小さくなって、簡単になりましたし、その分、アシスタントの数も減りました。アシスタントが付かないなんて事も当たり前になりました。制作費も下がってますし、そんなに人件費をかけられないという現実もあります。

結果的に、映像に関わる人が減るわけです。それでも、全体の仕事量は増えていましたし、仕事が無いなんて非常事態にはならなかったですね。

ただ、先輩方の引退は、確実に早まりました。それにはいろんな理由があると思いますよ。

技術革新に付いていけなかった、新しい映像制作環境に馴染めなかった(アシスタント無しで、急に一人で現場行けなんて言われちゃいますからね。)

単純に人を減らすために、会社的に引退を促して、マネージメント職にって言うのも沢山ありましたね。

それでも、当たり前ですが技術革新は進んでいきます。

簡単に言えば、アナログからデジタルになって、SDからHD、今は4k8kです。

記録媒体ひとつとっても、フィルムからオープンデッキテープ、インカセットテープ、そして現在はデータです。
カメラでは、光をフィルムに焼き付けるから始まり、撮像管、CCD、CMOSMOSなどのチップに変わりました。

機材の大きさも、どんどん小さくなります。今は、スマホで映画撮れちゃってますもんね。

もう、昔みたいな特別な技能なんて必要ないですよ。RECボタン押せば、誰でも撮れちゃいます。

スマホで済んでしまう時代ー
スマホ持っていないなんて人は、特別な理由が無い限りいないと思いますの、ガラケーでもカメラはついていますから、誰もが、カメラを持ち歩いているわけです。
編集にしても、無料のアプリケーションがたくさん出ています。スマホで、簡単な編集なら出来ちゃいます。
自分の作ったものを発信するのも簡単です。

技術革新のおかげで、映像を使って作品を作ることが、まさに一般化したわけです。
僕が思うに一般化するってことは、プロとアマチュア境界線が曖昧になるわけですよね。

残念ながら、スティルカメラ(写真)に比べて、映像の世界はその線引きの曖昧さ加減は大きいと思います。写真もムービーも両方ともスマホで撮れるのは同じなんですけどねぇ。

それともプロのスティルカメラマンも僕と同じような事を考えてるのかなぁ。ここら辺は一度聞いてみたいですね。

ープロとアマチュアの線引き?ー

とにかく、プロとアマの線引きが曖昧ってことは、誰でもプロですと言えるわけで(実際、収益を上げているユーチューバーなんて、全然僕らなんかより稼いでますから。)

YouTubeを見ていても、地上波のテレビ番組なんかより面白いものたくさんありますもん。

ただね、しっかりと対価を貰って、モノを作ると言うのと、自発的に作って結果的にお金になると言うのは、そもそもの大きな違いがあると僕は思います。
しかし、実はそれさえも、最近は曖昧になっているなぁと思います。だって、某スキルマーケットサイトでは編集で1本3000円からなんてザラですもん。

ちょっと待って、3000円?マジ?そんなん10分の1以下じゃん!

僕としては、そんな値段じゃ仕事として受けられないですよ。

衝撃でしたねぇ。悲しくもなりました。自分が何十年もやってきた技術がこんな値段なのかぁって。
時代の流れの速さに戸惑いました。
一昔前には、1本、数千万掛かって作っていたものが、今では数十万で出来ちゃいます。出来上がりもそこそこだったら、そりゃ、スポンサーさん、そちらに流れますよ。僕も、お金を出す側だったら、そうするでしょう。水は高いところから、低いところに流れます。自然の摂理ですね。

ー時代の流れー
パンデミック以降、その流れが顕著になってます。リモートワークが当たり前になって、企業も副業を推奨するようになって、編集が副業ですなんて人もたくさん増えました。

だって、毎月6500円でプロも使ってるAdobe製品がフルで使えちゃうんですもん。サブスクが始まった時は、本当に驚きでした。数十万するソフトがこの値段で?って。バージョンアップするたびに使いやすくなりましたしね。

誰でもちょっと勉強すれば、出来ちゃいますよ。

ーこれからの映像業界ー

ってことで、映像業界がヤバいって事に繋がるんです。
裾野が広がって、単価が下がれば、仕事の供給側は選び放題です。

選ぶ側が強いわけですから、ますます単価が下がるかもしれません。それで、質が下がっては、本末転倒ですが…。
多分、今は過度期なんでしょう。これからいろいろと淘汰されて、また落ち着くのかなぁなんて思ってはいるんですが、きっと、今までの僕たちの常識が通用しない業種になるのではと思っています。

それでもね、良いのです。時代の流れですから。

映像が好きで、この業種を長く続けてきたわけですけれども、映像の新しい未来も見てみたいと正直思っていますよ。ちょっと古い言い方ですが、撮るのも撮られるのも当たり前のデジタルネイティブの世代が作り上げる作品を見たいです。

ただね、おじさん編集マンから言わせてもらうならば、映像に対して真剣に向き合ってもらいたいなぁと思っています。

気軽に楽しいコミュニケーションツールとしての映像だから、一般的になってきたわけですけれど、ちょっとでも良いんです。映像には先輩方が工夫して作り上げてきた、いろんな表現手法があります。

感覚的に作って行くのも悪いことでは無いと思います。そこから、新しいものが生まれるかもしれません。けどね、昔からの手法、基本的な手法を知ってると、また映像表現の幅が広がるものですよ。そうすると、日本の映像業界も活気付くと思うんです。数多くの映像クリエイターに世に出てもらいたいのです。
なので、このブログを訪れて下さった方が、何かを掴んでくださるような事、何か参考になるような事、映像をやってみたいと思ってもらえるようなことを書いて行ければと思ってます。

当面は初心者の方の為の記事が多くなると思います。参考になったと思っていただけるように頑張ります。

ー最後にー
第一回目の今回は、半ば愚痴みたいになってしましたが、これから、映像業界に入りたいと思っている方に現状を知っていただきたくて書きました。

つまらない話にお付き合いありがとうございます。

次回は、編集技術の基本的な事を書いていこうと思ってます。

今後、それ以外にも気まぐれに映像とは関係ないことも書いていきますので、もしよろしければ、お付き合いよろしくお願いします。
それでは、また次回!