2:映画を見ようー雨に唄えばー
前回に引き続き、今回もミュージカル映画です。
この映画も名作中の名作ですね。前回ご紹介した「シェルブールの雨傘」は歌劇だと表現しましたが、この映画は、歌ありダンスありの、これぞエンタテインメントという映画です。
土砂降りの中で主題歌を歌って踊るシーンはあまりにも有名ですね。映画は観てなくても主題歌「Singin' in the Rain」とこのシーンはご存知の方も多いのではないかと思います。
雨に唄えば
1952年公開のアメリカ映画
監督:ジーンケリー、スタンリー・ドーネン
脚本:アドルフ・グリーン、ベティ・カムデン
音楽:レニー・ヘイトン
出演
ドン・ロックウッド:ジーン・ケリー
コズモ・ブラウン:ドナルド・オコナー
キャシー・セルダン:デビー・レイノルズ
勝手な感想
これぞエンタテインメントという映画ですね。
ジーン・ケリーの圧巻のタップダンス、ドナルド・オコナーの顔芸(笑)と身体を張った超絶ダンス、この二人の呼吸の合ったダンス、これは呼吸が合ったというレベルじゃないですね。とんでもないシンクロ率です。デビー・レイノルズがとにかくキュートでかわいい(本当にこの時代の女優さんは皆キュートですよね)
全てが凄い高次元で成立していて、観ている側も劇中の楽しい雰囲気に引き込まれてしまう、とても素晴らしい作品です。
あらすじ(ネタバレ無し)
サイレント映画からトーキー映画への転換期。サイレント映画の大スター、ドン・ロックウッドがトーキー映画に挑戦するという話を大筋に、当時の映画界の悲喜劇がコミカルに描かれます。(いつの時代も、何かの変換期には時流に乗れる人、抗う人、流されてしまう人と今と変わらないんですね。ちょっと身につまされる思いがします)と言いましても、話自体はそんなに複雑ではなく、明るく楽しいミュージカル映画となっています。
音楽
大半の楽曲は過去のMGMミュージカル映画で使用された曲の流用で、新曲は2曲のみだそうです。
元々がMGMスタジオのミュージカル部門責任者であったアーサー・フリードが過去に作った自身の曲を使ったミュージカル映画の企画を立てたことから始まったと言われています。
主題歌「雨に唄えば」はこの映画のオリジナル楽曲だと思われている方も多いと思いますが(僕もそう思っていました)なんと、実は,1929年にブロードウエイの舞台で歌われたそうです。
オリジナルじゃなかったんですねぇ。こんなミュージカルの名作なのに、オリジナル楽曲が2曲だけなんて、面白いですね。というよりも、アメリカはエンタテインメントの奥が深いです。
エピソード
あの有名な「雨に唄えば」のシーン。
ジーン・ケリーは40度近い高熱を出していたそうです。そんな高熱を出しながら、着ていたウールのスーツが縮んでしまうくらいの大雨を浴びて、あんなに楽しそうに踊っていたわけです。なんというプロ根性!それも何日もかけてあのシーンを撮ったそうです。あの名シーンにはそんな話があったのですねぇ。
ドナルド・オコナーは、コンクリートの床で、ジャンプや尻もち、空中回転などの身体を張ったパフォーマンスをした結果、撮影後に、打撲、身体を擦った火傷などの痛みや疲労から数日間の入院生活になったそうです。しかもこれだけで終わらないのがこのエピソードの面白いところ(当事者には気の毒ですが)実は、入院するまで頑張ったパフォーマンスが撮影機材のトラブルで、うまく撮れていなかったそうです。結局退院後にもう一度撮り直したそうです。本当に、当時は大らかというか、まぁフィルム撮影なんで、その場でちゃんと撮れているのか確認は取れないんですけど、それにしてもねぇ。ドナルド・オコナー、お気の毒です。でも、ドリフのコントに通じるものがあって、僕はこのシーン大好きです。
デビー・レイノルズは、ダンスに関しては、ほぼ素人の状態から3ヶ月のレッスンで撮影に臨んだそうです。完璧主義者のジーン・ケリーは、相当キツくデビー・レイノルズに当たったそうです。隠れて泣いていたデビー・レイノルズを見かねた同じMGM所属で、ジーン・ケリーと人気を二分していたフレッド・アステアが彼女を慰めたり、練習を手伝ったりしたそうです。
ある意味、凄いですよね。MGMスタジオの二大看板にレッスンを受けていたわけですから。しかし、のちにデビー・レイノルズはこの撮影が人生で一番辛かった事の一つと語っているとか。ちなみに、デビーは、スターウォーズのレイア姫、キャリー・フィッシャーのお母さんです。
オマージュ
この「雨に唄えば」は後の多くの作品に影響を与え、数多くのオマージュ作品があります。
スタンリー・キューブリック監督の「時計じかけのオレンジ」リュック・ベッソン監督の「レオン」にも出てきますね。
「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督は、「ラ・ラ・ランド」はもちろんの事、「バビロン」でもこの映画をモチーフにしたシーンが出てきますね。
最後に
同じミュージカルでも、ヨーロッパとアメリカでこんなにも違うんですね。片や、オペラや歌劇から連なる作風、片やとにかく楽しく明るくの、エンタテインメント。もちろん、どちらが良いかなんて言えません。それぞれの文化が窺い知れて興味深いですね。見比べてみるのも面白いですよね。後のミュージカル映画に多大な影響を与えたこの作品、まだ見られていない方は、ぜひご覧になってみてください。